御当地通

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*以下の記事は2006年4月発行のDBJ 経済ミニレポート(鹿児島)よりの抜粋です。
オリジナル(PDF)はこちらよりご覧頂けます。

「ご当地検定」と地域振興
〜これから発揮される「かごしま検定」の効果〜

「ご当地検定」と地域振興〜これから発揮される「かごしま検定」の効果〜

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中村  聡志

日本政策投資銀行南九州支店  企画調査課長

なぜ「ご当地検定」が盛んなのか

では、なぜこのように「ご当地検定」が各地で盛んに実施されているのであろうか。

第1に、経済社会が画一化しつつある中で、逆に地域への関心が高まってきているという背景があると考えられる。この地域への関心という要因にも、さらに2通りの考え方があるだろう。

一つは、地域への知的関心の高まりである。「ご当地検定」を実施している地域は大都市や城下町など豊かな歴史性を兼ね備えた地域が多く、そこではその歴史性を掘り起こしてみたいという知的関心がそもそも高いのかもしれない(鹿児島の場合、地域性として、そもそも自分たちの地域への関心が特に高いのかもしれない)。また、『団塊の世代』の地域への回帰傾向がよくいわれるが、この世代の知的関心と「ご当地検定」がマッチしているという指摘もあるviii。

しかし、今回のブームの中には、そういった知的関心ばかりでなく、地域性の中に今後の地域発展の方向性やビジネスチャンスをみているのではないかと考えられる。たとえば、「かごしま検定」で地元企業に高い参加意欲がみられたのも、そういった意識が背景にあるのではないだろうか。

第2に最近の資格取得ブームといった要因もあるだろう。事実、資格取得のサイトでも「ご当地検定」が取り上げられており、たとえば前述の「北海道フードマスター」に注目しているix。

第3に、これらの検定が、楽しみながら、あまり深刻にならず受験できるという仕組みを作っている点もあるだろう。カルチャーセンターに代表される日本人の「学び好き」xや、昨今のテレビのクイズ番組の人気xiを背景要因として指摘する声もある。いずれにせよ、最近の地域づくりの議論では「楽しさ」を演出することで活動のモチベーション維持することの重要性も指摘されておりxii、そのことは「ご当地検定」が受け入れられる重要な要素となっていると考えられる。

「ご当地検定」の効果

さて、以上の議論を踏まえて、このような「ご当地検定」はどのような効果を地域にもたらすのか考えてみよう。

「ご当地検定」そのものは基本的には主に地域に関する知識を問う試験である。そのため多くの「ご当地検定」ではテキストを作成し、それをもとに講習を実施し、試験を行っている。もし、「ご当地検定」の直接的な経済効果を問うならば、この試験にかかわる支出程度に過ぎないであろう。むしろ、この「ご当地検定」からどのような波及効果が生じるかが重要である。

現在実施されている「ご当地検定」はいずれも歴史が浅く、そこでの活動成果からこの効果を考えるのはまだ難しい。しかし、前でみてきたように、「ご当地検定」には、「人材育成」の方向性と、「地域学」の方向性があり、検定のもたらす効果は基本的にこの方向性に沿ったものになると考えられる。

つまり、第1に「人材育成」の側面であるが、観光などの地域産業に従事する人たちがその産業に関して学習を積み重ねることは、その産業のレベルを向上させて競争力の源泉となるとともに、その地域産業の人材開発を通じてその産業の底辺を拡大することにつながるであろう。一方、多くの人がその地域それ自体について多くの知識を持つことは、あたかも地域住民全体がその地域の観光情報の発信者になるような効果を持っているだろう。

現在のように、観光が地域産業活性化の戦略的分野となっている地域が多く、それら地域間の競争が激しくなっている状況下では、特に観光関連事業者のレベルアップ、そして地域住民全体のホスピタリティの質の向上が必要とされていることは論を待たない。鹿児島の場合でも、観光産業などのレベル向上の必要性は指摘されているxiii。参加者が楽しみつつ、同時に資格取得の満足感を与えるような「ご当地検定」の手法によって、地域全体のホスピタリティを向上させることは、こういった地域課題の効率的な解決手法と考えられる。

第2に「地域学」的な側面であるが、このような地域資源に関する認識や関心が高まることを通じて、この地域資源を維持、発展させようとする試みや、それらを利活用する試みが活発化する契機を提供する効果が考えられる。たとえば、ある景観の保全の議論を行うにしても、その景観の持っている価値について多くの人々の理解を得ていないとその事業は進まない。その際、「ご当地検定」を通じて地域資源などに関する共通の理解の土台ができていれば、より有意義な議論や活動が可能となるであろう。

これまでの議論を、南九州地域の地域戦略モデルとあわせて整理してみよう。

図表4は2004年12月に弊行南九州支店で発表した「地域づくり活動中期ビジョン」のエッセンスをまとめてみた図であるxiv。約言すると、南九州地域の地域資源を活用して国内外に当地域の「アピールポイント=信頼性(安心・安全)」の高さを発信し、それによって観光など他地域との交流を活発化させる。その積み重ねの中から、ものづくり・観光・まちづくりなど地域振興を図っていく、といった地域振興モデルである。